菜の花診療所の活動

2020/2/20 -第4回 振り返りカンファレンス

 古賀市にあるあおぞらの里訪問看護ステーション 2Fで、振り返りカンファレンスを行いました。

 今回は、間質性肺炎の方数名を振り返りました。間質性肺炎は癌ではありませんが、死に至る呼吸器疾患で緩和ケアが必要です。しかし、どの様に緩和ケアを提供していくのかまだまだ課題が多いです。緩和ケアとは、癌を対象にしている印象がありますが、1990年代以降、高齢化の進行や慢性疾患の増加という背景の中、緩和ケアの対象は非がん患者も含むと認識されつつあります。

 今回の場合は、高齢者で老々介護の二人暮らしの方々でした。高齢でしたが、意思がはっきりしていて、治療方針など意思決定を自分で行えます。どちらかというと、こちらからの言うことをなかなか受け入れてもらえなかったりもしました。その原因として、呼吸不全が慢性的に進行していて自覚症状に乏しいこと、癌のような悪性疾患と言われていないので急に悪くなることはあまり考えていないことがあり、患者さんと医療機関の間で認識の違いが生じたのかもしれません。しかし、ある程度動くと息苦しいので実際には入浴など一人ではできなかったり、トイレへの移動も介助が必要だったりと負担をかける場合が多く、またそのご家族も何かと自分が面倒をみようと愛情あふれ献身的な方が多いので、負担があっても無理をしがちとなります。

 このような状況で支援が十分か?急性憎悪時にすばやく対応できるか?分かっていても急な状態悪化にはバタついてしまいます。いつ・どの様に予後説明を行うか、どの様なサービスが必要か?高齢者の場合、介護保険の申請の時期はいつがいいか?などを話し合いました。ほかにも課題は多くあります。このような課題を様々な職種と連携しながら、少しでも改善できるよう今後もカンファレンスで話し合っていきたいと思います。

2020/2/4 -LIC トレーナーについての勉強会

 今回は古賀市にある「あおぞらの里 訪問看護ステーション」に場所をお借りして勉強会をしました。

 私は、筋萎縮性側索硬化症(ALS) の患者さんを数名訪問診療しています。徐々に筋力が低下し、いずれ嚥下や呼吸にも影響していく神経難病です。なるべく症状の進行を遅らせたいところですが、呼吸機能を維持するためにはどうしたらいいのか?その時一つの提案にLICトレーナーがあります。実は私も、患者さんのご家族から「LICトレーナーを試してもらえないか?」と提案されるまで、この機器の存在を全く知りませんでした。あまり体にかける負担は大きくなく、また自費となりますが費用も高くなく、保険診療上の縛りもないので、神経難病で呼吸機能に問題がある方には比較的早期から提案してもよいのではと考えています。私の受け持つALSの方に関わる全ての事業所に声をかけたところ、30名以上の参加となりました。少しでも多くの方に知ってもらい提案してもらえたらよいかなと思っています。

参考までに・・・

LIC(Lung insufflation  capacity)とは?

筋萎縮性側索硬化症(ALS) など神経筋疾患患者は、呼吸筋力の低下により肺胞低換気が生じるため、咳嗽力が弱化してくる肺・胸郭の伸張と咳嗽力の増強する一つの方法として肺容量リクルートメントがあります。

  • 息溜めができる → 深呼吸により最大強制吸気量(MIC:maximum insufflation capacity) まで息を吸って溜める。
  • 息溜めが出来ない → 一方向弁バルブとバックバルブマスクを使用し他動的に最大強制吸気量まで息を吸って溜める。この時の容量を LIC(Lung insufflation  capacity)といいます。

LICトレーナー(LT)とは?

肺容量リクルートメントを行うにあたり、特に息溜めができない方に LIC まで効果的に負荷をかけるための道具。

LT の対象は、

  1. 肺や胸郭の柔軟性を維持するために陽圧換気を行うことが困難な発症初期の方
  2. 人工呼吸器を選択しない方
  3. 息留めが困難な球麻痺(口頭咽頭機能の障害)の方
  4. 気管切開や気管挿管の方
  5. 非侵襲的人工呼吸器装置の方

LIC の練習が適応となる主な疾患

筋萎縮性側索硬化症(ALS) 、筋ジストロフィー、ミオパチー、高位脊髄損傷、重症筋無力症、ポンぺ病、脊髄性筋萎縮症、ギランバレー症候群、ポリオ後症候群、ニューロパチー、パーキンソン病及び関連疾患、両側横隔膜神経麻痺があります。

2019/10/3-第3回 振り返りカンファレンス

 10/3に第3回 振り返りカンファレンスを行いました。今までは当院で開催してきましたが、今回は東郷駅の横の「Cocokara ひのさと」をお借りしました。当院では13~14人も入ると満員でしたが、今回は20名以上入っても余裕がありました。800円/2時間で利用でき、プロジェクターなども貸して頂けるので大変良かったです。

 今回のテーマは『介入を拒否する患者さん・ご家族にどのようにアプローチしたらいいか?』でした。 
 医療関係者はある程度、今後のことを予測し、患者さんにアドバイスをしていきます。例えば 居室からトイレまである程度距離があり、移動時に転倒の危険がある場合、移動を楽にできるように廊下に手すりを付けることを提案したり、あまり移動しなくていいように居室にポータブルトイレを設置することを提案したりします。了解して頂ければこちらとしても少し安心できますが、様々な理由で拒否されることもあります。その時は、このままで大丈夫かな?と心配が残ります。予想される危険度が高くなるほど、心配は大きくなります。そのような時どうしたらいいか?患者さんやご家族が安心して、穏やかに自宅や施設で生活できることが目的であり、介入はその手段です。ご家族の意向に従い、介入せず、もし介入を希望される時にはすぐに介入できるように準備だけしておくのがいいのではないか、介入によるメリットを説明し、根気強く説得したり、場合によっては、やや強引でも介入をした方がいいのではないか?などの議論がありました。強引な介入により、患者さんとの関係が悪くなっては元も子もありません。しかし、例えば当初、デイサービスに行くことを嫌がっていたけれど、行ってみると案外楽しめたとか、訪問薬剤は要らないと言っていたけれど、来てもらったら薬の管理が楽になったり、夜間・休日に薬が必要となり助かったというようなこともしばしば見られます。介入を勧める医療者との関係性ができていれば、ある程度の強引さもあの人が言うなら仕方ないか?となるのかもしれません。医療者側は、そのような関係性を作れるように努力をする事が大切なのだと思いました。在宅療養では医学的な視点の他に、自宅の環境、経済的な事なども複雑に絡みます。環境整備や経済的な事の問題解決は、ケアマネジャーやその他の多職種での視点からの提案が大切なのだと思いました。

2019/6/24 第2回 振り返りカンファレンス

 当院で2回目の振り返りカンファレンスを行いました。今回は、前回よりも参加者が多く、やや診療所が手狭に感じました。当院は宗像市と古賀市の間、福津市にあります。宗像市、古賀市、福津市それぞれの地域に拠点を置く訪問看護ステーションの方に出席してもらいました。同業者同士ですが活動地域が違うと案外接点が少なく、よい交流の機会になったのではないかと思っています。今後は訪問看護以外の職種の方にも来てもらい、患者さんを振り返ると共に多職種間の交流の場になればいいなと考えています。
 今回のカンファレンスでは、未成年の子供を持つ方が癌になった時、どのような苦しみがあるのか、私たちはどのような関りが出来るのかを話し合いました。また、患者さんのご家族も苦しみを抱えています。それらをどのように拾い上げ、どのような対応ができるか、考えさせられます。患者さんの痛みを緩和する方法として、鎮静剤の内服や持続皮下注射などがありますが、神経ブロックという方法もあります。どのタイミングでどのように専門医につないでいくかという課題を感じました。みんな同じような経験があり、悩みながら対応しているのだなと感じた勉強会でした。

2019/6/5 -腹水ろ過濃縮再静注法(CART)についての勉強会をしました。

 肝硬変や癌などのためにお腹に水がたまることがあります。これを腹水といいます。ある程度までは内服薬で治療できますが、多すぎると薬では間に合いません。たまりすぎるとお腹が張ってきつくなったり、息苦しくなったりします。その際にはエコーでみながら気を付けてお腹に針を刺して、腹水を抜くという方法があります。これを腹水穿刺といいます。1回でおよそ3Lほどの腹水を抜きます。しかし、ただ抜くだけだと、腹水中にあるタンパク質なども一緒に抜けてしまいます。そこでその腹水をろ過濃縮して、必要なタンパクを体に戻してあげる方法があります。それが腹水ろ過濃縮再静注(CART)です。およそ10分の1程度に濃縮して体に戻します。3Lの腹水が抜けたら、300ml程度の点滴になるということです。施行には特殊な機械を使用し手間と時間がかかりますが、在宅でも可能です。腹水を抜くだけでなく、CARTを行ったほうが体には優しいので、なるべくなら在宅でもCARTを行いたいと思っています。そこで今回は、機械の操作や物品、施行手順などの確認のため、業者を交えて勉強会を行いました。
 以前、病院で救急・集中治療に関わっていた時には、夜間に数名の医師で透析回路を組み立てたりしていました。回路の組み立ては結構複雑でしたが、最近は回路が簡単に組めるようになっていて、ずいぶん楽になったなと感じました。

2019/3/29 -振り返りカンファレンスを行いました。

 在宅で看取った方に関して、在宅でかかわった医師、看護師、ケアマネージャーなどが集まって振り返り、問題点・改善点などがなかったか話し合いをしました。また、今回の事例に関わっていない医師や看護師も数名参加して頂き、違う視点がないかアドバイスをしてもらいました。定期的に行うことで、自分たちの診療やケアが偏ったものにならないように注意していきたいと思います。
 今回は、2人の方について話し合いました。疾患の治療に固執しすぎると、患者さんやご家族の希望と違うことが起こりえます。病院でがんや重篤な疾患に対する治療の時によく問題になりますが、在宅でも床ずれの治療をどうするか、栄養・水分などをどうするかといった違う形で問題になります。全くの正解はないのですが、患者さんやご家族との関わりの中で、どのような過程が必要なのか考えさせられます。